私たちは、東京で靴下製造メーカーを営んでいます。
2017年に、バーチャルで靴下サンプルの製作が可能な島精機製作所のデザインシステムSDS-ONE APEX3を導入しました。

靴下のサンプルワークにデザインシステムを活用するようになって、3年目に入りました。
まだまだ十分に使いこなせていない部分があります。
今年度の反省点と、これからの活用方法について考えてみました。
2019年の反省点
2019年デザインシステムで靴下のサンプルワークを行う中で、下記のような問題点がありました。
産地の変更による糸見本帳の違い
2019年、弊社の工場別生産比率は、台湾85%、中国15%でした。
靴下の色の元になる糸見本帳は、産地によって異なります。
2017年システム導入当初は、主に中国で製造していました。
中国工場では、日本の糸メーカーが出している「クレヨンハウス」と「アビラス」の糸見本帳を基準に糸色を整理しています。
汎用性が高い糸見本帳で、私も何回購入したかわかりません。
島精機製作所のデザインシステムSDS-ONE APEX3にも標準装備されており、色もばっちり合っています。
弊社、昨年(2018年)後半から、台湾工場で製造する機会が多くなりました。
台湾の糸見本帳は、中国で使われているものと異なります。
台湾の靴下産地は台湾中部の「社頭」にあります。有名な靴下産地の一つにはなりますが、中国の規模にはかないません。
システムにも、台湾の糸色は装備されていないため、新たに入力する必要がありました。
色の感覚は、専門家ではないと測ることができないため、外注先に依頼し、システムに入力するデーターを製作して頂きました。
実際に使ってみると、糸色がぶれ気味で、デザインは早々と校了になっているのにかかわらず、色修正で何度もサンプルを製作しなければならないことが多くありました。
来年早々糸の入力を依頼し直して、早めに改善するつもりです。
左右柄違いの問題
左右柄違いの靴下のサンプルにおいて、左右で柄が微妙に違うものを製作するとき、バーチャルサンプルで工場に指示をしてもうまく伝わらないことがありました。
実寸で靴下の模型を製作して、工場に指示を出しなおしたところ、一発で正しいサンプルがあがってきました。
それまで何回も修正のやりとりをしていたのが、夢だったのかと思うくらいでした。
以来、左右柄違いの複雑な案件については、システムで製作した平面の図案を、靴下の模型にしてお客様及び工場に提示するようになりました。
模型サンプルの作り方については、次回改めてレポートします。

バーチャルサンプル工程を端折る(はしょる)とさらに時間がかかることがわかった
バーチャルサンプルを製作しなくても、靴下のサンプルを製作することは可能です。
型数が多い案件で、バーチャルの製作をせず直接サンプルに進んだことがありました。
案の定修正が入り、2ndサンプルで、納期がぎりぎりになり、東京から博多まで飛行機でハンドキャリーする寸前までになりました。
お客様が良い方法を考えてくれたおかげで、ハンドキャリーはしなくても済みましたが、大変申し訳ない思いでした。
はじめの時点で、バーチャルを製作しなかったことを、ひどく後悔しました。
バーチャルを製作していれば、サンプル製作1回分の時間がカットできたので、ご迷惑をおかけすることはありませんでした。
2020年の展望
社内Wikipediaを作って使い方を共有する
SDS-ONE APEX3にはマニュアルがありません。
その代わりオープンセミナーと言う、予約を取れば通い放題のセミナー制度があります。
オープンセミナーに何度救われたかわかりません。
マニュアルがないので、操作方法を忘れてしまった場合、セミナー時のメモを見返して思い出す作業をする必要があります。
メモがどこにあるかわからなくなってしまい、セミナーを受けなおしたこともありました。
現状バーチャルサンプルの製作と工場とのやりとりは、全て私が担当しています。
昨年イラストレーターができるスタッフが入社しました。
今すぐには難しいのですが徐々にバーチャルサンプルの製作も依頼していきます。
その際に、社内Wikiを作って、使用方法を共有できるようにしておきたいです。
Wikiを作ることによって、自身が使用方法を忘れたときも、再度見返せます。
提案サンプルを製作する
現物のサンプルを製作することなく、バーチャルでサンプル製作ができるので、工場の手間やお金をかけずに提案用サンプルを製作できます。
私たちは、OEMが中心になりますが、ODMの能力を持った企業、デザイナー、クリエイターなどが、デザインシステムを使えば、かなりのことができます。
(バーチャルサンプルと同じように現物サンプルの製作ができるかどうか、工場と検証する必要はあります)

マーケティングへの活用
靴下は、平面のデザインをドット絵に置き換えて製作します。
ドット絵は、工場のデザイナーが製作します。デザインを一度ドットに分解するので、
平面のデザインと100%同じものが出来上がることはありません。
SDS-ONE APEX3でバーチャルサンプルを製作することにより、出来上がりをサンプルを製作することなく確認することができます。
配色パターンなど、簡単に変更ができるので、何パターンかサンプルを製作し、SNSにあげて反応を見たり、実際に販売をすることも可能です。
本格的に始動した戦国足袋靴下。
ご予約ご希望の方はDM、コメントにてお知らせください。
PS、山形模様御朱印帳残り一つ。当分、作製予定はありません。#靴下 #戦国 #刀剣乱舞 #大河ドラマ #武将隊 #戦国炎舞 #戦国BASARAバトルパーティー pic.twitter.com/kYrNLnNN7t
— 奥州王 (@oushuou) June 27, 2019
弊社がSDS-ONE APEX3で、バーチャルサンプルを製作し、ブランドがTwitterでそれをあげた所、
「発売されたら買います」という方が現れたには、驚きでした。
デザインやブランドの集客力がベースになっているのは確かではありますが、「サンプルを製作する前に売れた」のにはびっくりでした。
来季は、本気で靴下のブランドを立ち上げたい、デザイナーやクリエイターとお仕事をご一緒できればと考えております。
ブランドが成長することを何よりも楽しみに仕事をしております。
